model : TD-16
Dining table inspired by papyrus
パピルスをイメージしたダイニングテーブル
一枚の紙が、軽やかに浮かんでいるような天板のテーブルをつくりたいと思った。
世の中には見栄えだけを求め、真実が覆い隠されたものが溢れている。
このような事に常々疑問を抱いている。
だから、手で触れた時にも、薄さ、軽さを感じられる、リアリティのあるテーブルをつくりたいと思った。
天板を支える脚も細く華奢で、どこか儚さを感じるものにした。
触れた時にはきっと、その繊細で小さな質量感をテーブルから受け取ることができると思う。
そんな、道具との対話を楽しんでいただきたい。
対話はいづれ愛着へと変わってゆく。
繊細なデザインのダイニングテーブルです。
薄い天板と細い脚により、このサイズとしては軽量です。
よく見ないと判らないくらい、ほんの少しだけ傾けている脚。
天板の木目は美しさに気を使い選択しています。
また、板目と比べて暴れにくい柾目を使用しました。
天板の端部に至るまで丁寧な仕上げです。
対面で座った時には、互いが程よい距離感です。
直線を基調としていますが部分的に曲線を取り入れて、印象が硬くなりすぎないよう和らげています。
脚の断面は、四角形から丸形へと変化する特徴的な形状です。
各部はとても触り心地が良い仕上がりです。
一般的な椅子であれば4脚がゆったりと置けます。
愛知県名古屋市の家具工房で一つ一つ丁寧に手作業で製作されます。
見て、触って、使って、楽しんでほしいダイニングテーブルです。
[素材]
素材は楢(ナラ)の無垢材を使用しています。
楢は硬く強度があり耐久性も高く、傷や割れにも比較的強い為、長きに渡って使用できる素材です。これは既に長い時間を経て残っているアンティーク家具の多くに楢が使われていることで実証されています。
木目は派手さや豪華さは無いものの落ち着きのある美しさを持っており、経年変化により深みを増していきます。
また、柾目の材料を使用していますので、どちらかと言うと控えめでインテリアに馴染みやすいと思います。
これらの理由から、質の高い家具を製作する素材としてのバランスの良さや長所が多くあることから楢を選択しました。
材料は、長年の付き合いがあり、製材や乾燥などの管理において信頼がおける材木屋さんから仕入れ、木目の使い方からじっくりと検討を重ねて製作されています。
[仕上]
楢の特性を壊さず経年変化を楽しむことができ、愛着が湧くような仕上げを施したいと考えました。
したがって、多少のお手入れは必要であるものの、それ程神経を使わなくても良いオイルフィニッシュを選択しました。
また、既製品では手を入れることが難しい細かい部分まで、ひとつひとつ丁寧に高い精度で仕上げられています。
お使いいただいた際には、造り手の家具への愛情を感じていただけると思います。
model : TD-16
価格:¥478,500(税込)
寸法:W1,800×D850×H720
素材:ナラ無垢材
仕上:オイルフィニッシュ
生産:Made in Nagoya
TOGODESIGNにて実物をご覧いただけます。
※TOGODESIGNへお越しいただきお話をさせていただく場合のみ、他の素材、他の仕上げ、W寸法の変更も可能。(別途お見積もり)
ご購入方法
[開発ヒストリー]
今、このテーブルで文章を書いている。
気に入った物に触れていると気分良く文章が進む。
このような効果はとても大事なことだと思っている。
完成の1年半前・・・・一枚の紙のようなイメージの天板のテーブルをつくる事を目標として開発を始めた。
木の無垢材でありながら、薄さ、軽さにこだわる事が大きなハードルであることは最初から理解していたが、そこにはこのテーブルをつくる意味があると思っていた。
最初は何枚も何枚もスケッチを重ねてイメージを高めた。
イメージが固ってきたら図面を描き始めるが、同時に3Dでも検討をおこない2Dと3Dを何度も行ったり来たりして修正を繰り返しながら煮詰めていった。
こうしてテーブルのデザインが一旦決まったのは開始から8ヶ月くらい経った頃だった。
一旦と書いたのは、次は製作工房へ足を運び、沢山の打ち合わせをおこなった上でデザインを最終決定するからである。
だからデザインにはまだ先がある。
図面を持ち込み、製作をお願いしている宮嶋さんと何度も打ち合わせを行なった。
そこでは部材の断面寸法の見直しや、樹種を何にするか、仕上げはどうするかなど様々な話をしてデザインを最終決定した。
漸く試作に入れる段階となった。
宮嶋さんは家具製作に20年以上携わるベテランだ。
日頃は自身の工房のオリジナル家具や様々なオーダー家具を製作しており、幅広い知識と経験が豊富である。
このテーブルのハードルの一つは天板が反らないようにすることだった。
薄い無垢材の天板なので、当然ながら難しい。
合板を使えばずっと楽であろう。
宮嶋さんに苦心してもらった結果、吸い付き桟の反り止めでこれを解決することができた。
強度は薄さなりだし見た目なりなので、テーブルに大きな力が加わるような乱暴な作業はやめた方が良いが、普通の使用では全く問題ないレベルに仕上がった。
脚の断面も四角形から丸形へと変化しているので手間がかかるし難しい。
太さについても細い方が繊細であるが揺れに抵抗できなくなる。
かといって太くすればするほど繊細さは失われる。
とても悩ましい。
互いにせめぎ合った中で、繊細さが失われないギリギリであろう太さに落ち着いた。
こちらも見事クリアしていただきテーブルは完成した。
触り心地の良い天板をそっと撫でると弦楽器のような薄さを感じられる。空気を通して軽快な振動が鼓膜を刺激する。
少し大袈裟かもしれないが、これは味わった事がない感覚だった。
一般的に、無垢材のテーブルの天板は厚い方が強く立派であり価値が高いとの認識がある。確かにそれは間違いなく一つの価値であると思う。
しかし、また別のところにも違った価値が存在することを忘れてはならない。
そして今回、繊細さや弱さにも高い価値があることを実感できた。
一つのテーブルが完成するまでには、長い時間がかかる。
妥協をすれば時間はかからないのかもしれないが、妥協するものづくり程つまらない事はない。
この家具づくりにおいては採算が合うとか合わないとか、そのような物差しは持ち合わせていなかった。
純粋に作りたいからやってきた。
更には、こうして出来上がったものを誰かに気に入ってもらえたら嬉しい。
ただそれだけなのだ。
そのようなシンプルな動機でこれは始まった。
やはりものづくりは楽しんでやりたい。
情熱が続く限り。
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